成城を歩く

富士見橋と不動橋

寄り添いながら、街を見守りつづけるふたつの橋

富士見橋と不動橋。このふたつの橋は、成城に数多くある橋のなかでもペアで名高く、高台から100年以上もの間、街を見守ってきました。時代とともに変化をとげてきた風景や庶民の暮らしを知る、歴史の証人ともいえるでしょう。
今や、日本有数の高級住宅地として、瀟洒(しょうしゃ)な家々や店が建ち並ぶ成城。しかし、富士見橋と不動橋が架けられた当時は、手つかずの山地で、人がほとんど住んでいなかったのだとか。橋も、コンクリートで整備された現在のそれとはほど遠い、木造の小さなものだったようです。

そして戦後、農地改革で田畑がつくられ、人が増え、いつしかふたつの橋もコンクリートのものへと変わっていきました。しかし、いつの時代も橋に立てば、下には列車が颯爽と走り抜け、目の前には白い頂の雄大な富士山の姿があったのです。現在の富士見橋には、ベンチのあるバルコニー空間も設けられているので、散歩の休憩などに、ぜひ訪れてみてください。

初代の橋を見られる貴重な写生帖

成城の見どころとして、広く知られる富士見橋と不動橋。しかし、昔の橋を知ることができる資料は、ほとんど残されていません。そんな橋の、初代の姿を見られる貴重な資料のひとつに、画家・丸山永畝の写生帖があります。同画家は、昭和25年以降、晩年の十数年を狛江で過ごし、狛江・世田谷・多摩川周辺の風景画を数多く写生しました。崖線に切り立つ木々や、走り去る列車、農村に佇む民家が力強い墨のタッチで描かれており、往時の農村の空気感までもが伝わってきます。
※風景画はすべて『野の画人・丸山永畝の写生帖』世田谷区立郷土資料館発行より抜粋

富士見橋と不動橋

世田谷区成城2丁目~5丁目の小田急線上。成城学園前駅側に位置するのが富士見橋。それと並行して喜多見駅側に位置するのが不動橋。
アクセス/小田急線「成城学園前」駅より徒歩約5分

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